CELLULAR DATA SYSTEM

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Volume×Velocity×Variety=CDS

開発者インタビュー 児玉 敏男 ~前編~
カテゴリー:開発秘話2016.06.22

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なんて美しい理論なんだろう、と思った

ただ、難しそうなのですが、なんてきれいな、美しい理論なのだろうなと直感致しまして、これはすごい理論なのかもしれないと。そのときは分からなかったので「かもしれない」なんですが、直感的にこれは革新的なことができるかもしれないと。ただ、「認識したもの、全てが本質になりうる」という東洋の哲学が好きで少し勉強していましたが、非常に近似しているなとも思いました。
プログラム基礎等も1年間で勉強し、最後の修士論文の発表のときに修士論文がなぜか高く評価されたみたいで、私は当時國井先生のゼミではなかったのですが、たまたま私の発表を見ておられた國井先生より、「ご発表の内容は、理論化すれば十分学術上国際会議の査読に耐え得るものと判断いたします。実用上の意味も大きいのでimpact factorも大きいと考えます。後は具体的にどう仕上げていくか、相談したいと思います。」という、とてもご丁寧なメールを頂き、"世界的に権威のある先生が、ただの一企業の一研究員に対してここまで期待をしてくださるとは"ととても感動いたしました。このメールは忘れられません。それが私の人生を変えたんですね。そのときに、うまく表現できませんが、自分の生命がとても歓喜し"私はこの研究をやるために生まれてきたのだ。自分の使命だ"とまで思いました。今でもそう思っております(笑)。また"自分の使命なら、必ずできるに違いない"という変な確信もありました。無論当時は、実力はまったく不相応だったのですが(笑)。ただ、この研究で将来出世してやろう、偉くなりたい、なんて気持ちは一切ありませんでした。一応東大で修士まで土木工学をやってましたが、情報工学に専攻を変えることになったとき、未練も一切ありませんでしたね(笑)。
しかし、それからが大変でした。会社に戻ってからも情報システム部に入って引き続き國井先生の理論を勉強したのですが、本当に難しくて最初は全然進みませんでした。やっていること自体は新しいことなので非常にわくわくしながらやっていましたが。とはいえ、やることといえばトポロジーとかホモトピーとかいう新しい数学を勉強しながら國井先生にメールで質問するくらいだったのですが。

それとは別に、当時上司だった関さんに、國井先生のところでこういうことを勉強しているというのを話して、現実に即したいろいろな知恵をいただいて、ああでもないこうでもないといったものを聞いて、自分なりに解釈して國井先生のところに持っていくと進んでいくんですね。國井先生と関さんとの間でやり取りしながら行くとなんとなく一歩ずつ進んでいって。2002年夏に、スイスのジュネーブ大学での国際学会で、國井先生と共著で初めて英語で論文を書かせて頂き、國井先生の「実践で鍛える」という教育理念の下、先生の代わりに発表させて頂きました。初めて行くヨーロッパ、初めての本格的な英語での学会発表、しかも50分という長い招待講演としての発表の機会。口から心臓が飛び出るような緊張と不安の連続でしたが、なぜか楽しくてしょうがありませんでした。
理論と現実とは違って、理屈は合っていても実装したところで現実的に使わないものもあるんです。そこらへんはばさばさ切りながら。コアロジックを実際に実装して國井先生に見せたときに、「とりあえず原型はこれでいい。良く出来た」ととても喜んで頂けた。そうなってからはすごく早かった。

そうするとどうなるかというと、国際学会の論文が次々に通るんですね。それも高い評価で。最初の頃は、日本の情報処理学会ではぜんぜん通らなかったのに。
2006年に、國井先生、関さん、小生の3者でCDSの原型となる論文をスイスの研究機関エコールポリテクニークでの学会に出したら高く評価されて、優秀論文の候補にまであがりました。その次の年はフィンランド、ドイツ、中国。去年はポルトガル、チェコ、イギリス、ドバイで発表して、いくつかは優秀論文に選ばれたりして、いずれも高く評価していただきました。どこへ出しても新しくて面白いと。Challenging Workだという風にいっていただいて。世界のどこもやっている人がいなかったんですね。この分野の最先端企業が集まるアメリカのシリコンバレーで働く方と話しても、類似した技術は見当たらなく革新的である、と。

今でこそそういう評価をされていますが、当初は日本の学会で発表しても何も反応がなかった。肩書きを大事にするのが日本ですから「何を言っているんだ、建設会社の人間が」みたいなレベルで、あまり相手にされなかった。
それが「國井先生と一緒に研究しています」というと急に態度が変わったりして。情報処理学会の学会に一人で参加した際も「國井先生と一緒にやっていて、実際にプロトタイプシステムができています」といっても全く信じてもらえなくて、思いっきり笑われたりしました(笑)。
でも実際にPC上で動いているコアロジックを論文にしたら非常に評価されて今に至るわけです。学術界に評価されたということは、理論的なバックボーンもきちんと裏づけされている客観的な証明になります。ある程度の成果が出た今、いろいろ見渡してみると、既存の技術がCDS全体のうちの一部であることが良く見えるようです。 それだけをやっていると見えないことが多いんですけど、CDS全体のうちにいろんなものが位置づけられていて、人が言っていることも「この人はここら辺のことを言っているな」というのがわかるようになってきました。
セル理論は汎用性が高くて、ほとんどの事象を表現するんですが、既存のこの技術はここを使っている、というのが見えてくる。技術の根本にある思想が見えてくる。細かい議論は別として、なんとなくほかのことも良く見えてきたような気がしたんです。それは非常に大きな効果でした。逆に、既存の一つの技術に専念している人が我々の研究内容を見ると、分からないか批判するかどっちかです。
その点、私は取り組んでいる内容が結果としてこの分野で世界の最先端だったので、とても幸運だったなと思います。最初からそれが分かってやっていたわけではないですから、「ラッキー」というのが正直なところですね。

【児玉 敏男 プロフィール】
1975年3月1日生まれ
1997年3月 東京大学工学部社会基盤工学科卒業
1999年3月 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修士課程修了
1999年4月 前田建設工業(株)入社
2001年3月 法政大学大学院IT Professional Course修士課程修了(派遣留学)
2010年7月 東京大学より博士(工学)取得
その後國井利泰東大名誉教授に指導を受け、セル理論に基づいたデータ処理システム(Cellular Data System、以下略CDS)の開発研究を継続、現在同社本店新技術事業化推進室にて事業化プロジェクトに所属、論理開発・コア技術開発を担当。
ドイツ、スイス、カナダ等、欧米を中心に情報工学の国際学会、研究発表会で30回以上発表を行う。CW2007(ドイツ、ライプニッツ大学)、ISDPE2007(中国、四川大学)、ICADIWT2008(チェコ、オストラバ工科大学)、CW2011(カナダ、カルガリー大学)にて優秀論文、CW2015(スウェーデン、ウップサラ大学)、CEA2010(アメリカ、ハーバード大学)、AIKED2010(UK、ケンブリッジ大学)にて招待論文。Journal of Computer Science Technology 2008(Springer) にて高い評価を得る。
特許 セルラーモデルに基づいた新しいデータ処理装置を国際特許(PCT)(2006/9)
業務に応用した内容を国際特許(2007/11)
他5つの関連特許を取得。
所属学会 IEEE正会員、情報処理学会正会員