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バンクーバーでの国際学会WCCI2016に参加
カテゴリー:特集2016.08.24

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国際学会WCCI2016に参加するため、7月の22-31でカナダ・バンクーバーに出張した。人口200万の大都市だが、とても治安がよく大自然が近くにあり、この時期は気候もよいので、ダウンタウンは多くの観光客で賑わっていた。
 今回の国際学会は、バンクーバーコンベンショナルセンターでのいわゆるIEEEのワールドコングレスで、知的情報処理分野の年に一回の大会だった。世界中から多くの研究者が集まり朝の8時から夜の19時までパラレルに4会場で多くの研究が発表、議論されていた。その中で、とても多くの聴衆を集めた基調講演の一つが、ハーバード大学の計算機学者Leslie Valiant教授の"What Can be Automated: A Viewpoint from Learning and Evolution"であった。私も聴講したが非常に面白くためになった。それは「人間が効率的に自動学習したタスクの外接化は可能か」「進化と学習の統一理論は人間や他生命体が潜在的に獲得し実行できる能力を特徴づけなくてはならない」という主旨のものであった。つまり、経験で得た知恵(Learning)を次世代への継承(Evolution)する統合モデル化が必要であるということか。生物の進化を模倣しようとする研究の一つである。國井先生のセル理論も情報の発展的拡大を志向するので、國井先生とも発想が似ている。今後のValiant教授の理論化に注目していきたい。また、別の面白かった講演が、スペインのPompeu Fabra大学のRicardo Baeza-Yates教授の講演"Data and Algorithmic Bias in the Web"であった。「ウェブ上のデータには、スパムデータやデータの冗長な重複などのバイアスの原因となるアクションがあり、バイアスのあるデータが生まれ、それがバイアスのあるアルゴリズムとなり再帰的にバイアスのデータが増加している」という問題提起だ。ストーリーは簡単だが、昨今のデータ偏重主義に異議を唱える内容で本質をついていると思う。またウェブ上のデータ(知識)に対してそれらを取捨選択し活用する行為(知恵)は別であり混同してはいけない、ということか。確かにウェブ社会で知識・情報は急速に膨大しているが、その情報社会を営む人間の知恵は進化しているのかははなはだ疑問である。また、ポストディープラーニングとして注目されているスパイキングニューラルネットワークの研究の第一人者ニュージーランドのNathan Scott博士の"Spiking Neural Networks: The Machine Learning Approach"も大変興味深かった。スパイキングニューラルネットワーク(SNN)とは、従来のニューラルネットワークとは異なり発火の頻度ではなくニューロンの内部電位に注目したモデルでありアナログ量をパルスタイミングで表現する。今回の発表はニューロンが変化する過程をビジュアル化した内容であり、実用には至っていない。ディープラーニングと比較して処理コストが飛躍的に増えるので、実用化には高速処理が課題になる。その意味でCDSへの適用は随分先になりそうだ。
 これらの聴衆に人気のある講演の多くはこれらのような「そもそも」な話の類いが多いように思う。ものごとの前提の考えに疑問を持ち、聴衆が発想の転換を迫られる内容だからなのだろうか。その分、社会で実現された時のインパクトも大きい。ちなみに、私が随分前に國井先生のセル理論、増加的モジュラー式抽象階層(Incrementally Modular Abstraction Hieraechy)の講義をお聞きしたときも、直感的に情報科学に"同値"、"不変量"の概念を導入しようとする「そもそも」な議論との印象を持った。つまり、「情報は簡単にコピーされるが、そこで情報の"同値"が突然消滅する。物理学に質量保存やエネルギー保存等の"同値"の概念があるように、情報科学にも形は変わっても情報量が保存される法則、つまり"不変量"の概念が必要であるということ」と解釈をした。ちなみに、その講演後に國井先生に私の解釈を伝えるととても喜んで頂きそこから共同研究が始まり現在に至るのだから直感はバカにならない。
 今回の国際学会では、上記の他にも、multi-objective optimizationやprobablistic programing、fuzzy system等、CDS応用研究に関係するものも多く大いに研究上の刺激を得ることができた。早速論文ファイルを読み返しながら、國井先生や関氏と研究の議論を進めたいと思う。
 ところで、過ごしやすいバンクーバーで快適な旅となるはずだったが、2日目に寒暖の差が原因なのか、発熱、悪寒等、少し体調を崩し、現地で病院に行く羽目になった。日中の会議は鎮痛剤を飲んで何とか過ごせたが、空いている時間に観光に行く気力もなくホテルで過ごし、体重が2kgも減った。職場、家族に心配をかけてしまい大変面目ない思いであるが、研究業務も私生活も健康でなくては始まらないとつくづく思う。

▼発表風景

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